Lens Impression
35mmムービーカメラに35mm、90mmとともにターレットで装着されていたレンズです。
外見も汚れだらけでしたし、光学系も曇っておりましたが、幸いなことに困難なく分解でき、ガラスも通常の洗浄でクリアになりました。全体としてはまだ少しクモリが見えますが、実用上全く問題ないレベルです。
General Scientiric Corporationというなじみのない会社名で私も初めて知りました。調べてもほとんど情報はなく、特に光学的な資料は全く見当たりません。
総帥はAlfred Strelsinという立志伝的な人物のようです。1898年にアントワープに生まれ、両親ともどもすぐにミルウォーキーに移住します。大学を卒業後、新聞記者や製薬会社の広告マネジャーを経て、1920年代にシカゴでthe
Reliance Advertising Companyという広告会社を設立します。多くの石油会社の宣伝を請け負いつつ、当時主流だった陶器エナメル看板の需要をにらんでドイツの陶器会社との合併などを行い、それを石油会社に売り込んで成功しました。
広告がネオンサインに変化していくと、そのための電子部品の需要に目を付け、それらを担うために設立したので、このGeneral Scientific Corporationです。
同社がレンズの製造を行った契機は何だったのかは不明ですが、ネオン管ではガラスを多く扱うでしょうし、同社の業務内容の一つに光電池の研究も上げられており、これらの関係でレンズ生産への関心とノウハウが蓄積されていったのかもしれません。その後複数の企業買収を通じて会社を発展させました。NYC6番街の地下鉄も彼の仕事です。
General Scientific のレンズとしては複数の焦点距離で「Miltar」という名称が最も知られているでしょう(それでもごく一部でですが、、、)。Miltarには
General Scientificと Bell and Howell のダブルネームのものが多く、2インチT2.2というスペックのものも存在します。今回のレンズと似たスペックではありますが、その関連については残念ながら現時点では解明するだけの情報がありません。ただ、ダブルネームのレンズにはいずれも「made
by General Scientific Corp」と刻印されているので、同社が製造を請け負っていた可能性が高いと思われます。
レンズ構成についても情報はありません。ガラス面の反射を見ると、前群が5カ所、後群が5カ所ですので、スペック的にも4群6枚のダブルガウス型と考えるのが順当のように思われます。描写は非常に解像力が高く、線の細い描写です。開放ではコンディション上フレアで少し白っぽくなりますが、予想外の高性能レンズで大変気に入りました。
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